全国17都道府県のコンビニATMで、2時間あまりのうちに現金計20億円近くが不正に引き出された事件では、用意された偽造クレジットカードや犯行現場の多さから周到な計画がみてとれる。発覚後に逮捕された男2人は「指示役」の存在を供述しており、各地に張り巡らされた犯罪網が浮かびつつある。海外カード対応のATMは増加が見込まれる一方、セキュリティー対策で遅れがあるとされる日本。捜査関係者は「国内が犯罪しやすい場所と思われてはならない」と組織の実態解明を急いでいる。
日曜早朝の犯行…100人以上が一斉に引き出す
「損害額は推定で約3億ランド(約21億円)に上る」
南アフリカのスタンダード銀行は23日、顧客情報の流出を認め、事件の被害額を発表した。
同行が発行するクレジットカード情報1600枚分がなんらかの経緯で漏れ、偽造カードが作られた。それが日本国内のATMで使われ、現金が大量に引き出されたとみられる。事件の実質被害者は同銀行となる。
引き出しに使われたATMは東京、神奈川、愛知、大阪、福岡などの約1800台。海外カードが利用できるセブン銀行、ゆうちょ銀行、イーネットのものだった。
犯行があったのは5月15日の日曜日。午前5時過ぎから約2時間半の間に100人以上の「出し子」がこれらのATMで一斉に限度額を出金した。1枚のカードで複数回引き出したケースや、ATMを渡り歩いた出し子もおり、取引は全国で計2万回近くに上るとみられる。
各地での不審な引き出しを検知したセブン銀は取引を中断。偽造カードと認識された数枚のカードはATMの中に残っており、全て中国系の焼き肉店のカードだった。
振り込め詐欺と似た構造 暴力団関係者の影も?
一方、愛知県警は5月31日に県内で計380万円を引き出した男2人を逮捕。男らが不正使用した2枚の偽造カードにはそれぞれ、ジンバブエと南アフリカの男性の情報が書き込まれていた。