加藤達也の虎穴に入らずんば

「力ずく」で徴用された朝鮮人とはこれいかに…原爆資料館の誤解を招きかねない英訳に異議あり

 核兵器の脅威を世界に広め日本の平和に取り組む姿を国際社会にアピールするため、この状況は最大限に活用されるべきだと思う。

 だが、気がかりなことがある。それは、展示品に付けられている説明文の一部に誤解を招きかねない表現があるということだ。

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 本館の展示スペースの入り口を入ると、被爆当時の爆心地付近の町並みを再現した円形の大きな模型がある。原爆ドームの上空には原爆の炸裂(さくれつ)直後に発生した赤い巨大な火球が不気味に浮かんでいる。

 模型の縁には「直接被爆者」という説明書きのプレートがあり、昭和20年8月6日の原爆投下時、広島にいた約35万人とみられる「直接被爆者」のなかに数万人にのぼる朝鮮の人たちが含まれていたことに言及。《日本国内の労働力を補うため、朝鮮から強制的に徴用され、軍需工場などで働いていた》と続いている。

 朝鮮半島出身者の日本本土での勤労動員は、朝鮮半島における国民徴用令の適用免除が解除された19年9月に始まり、20年3月に人員輸送のための船舶と航路の確保が困難になるまで、約7カ月続けられた。国民徴用令に基づく勤労動員を「強制的に徴用」とする表現が正確か否か、日韓の専門家の間にも異論がある。

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