【産経抄】「移り気」なアジサイの季節 有権者は感度を磨け 6月5日 - 産経ニュース

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「移り気」なアジサイの季節 有権者は感度を磨け 6月5日

 芭蕉の句に〈風流の初めや奥の田植うた〉とある。白手ぬぐいの姉さんかぶりに赤だすき、歌に合わせて手際よく苗を植えるのは早乙女であろう。稲などのとがった穂先を「芒(のぎ)」と呼び、この時節に種をまく。きょうは二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」である

 ▼先ほどの句からは、田植え歌とはまた別の歌も聞こえてくる。小紙の投稿欄「談話室」に農業を営む男性のお便りが載っていた。「自宅近くの田んぼでは夜、カエルの合唱になる。雨が降るとその声は一層高らかになる…」。耳で知る季節の移ろいに味わいがある

 ▼俳句の季語がそうであるように、四季への感度は自然が身の回りにあってこそ磨かれる。都心では季節感の砥石(といし)となるものが乏しい。植物の開花や動物の初鳴きから季節の変化を知る気象庁の「生物季節観測」も、東京や大阪などの都市部ではかなり難渋している

 ▼観測項目となってきたホタルやトノサマガエルは近年、まったく姿を見せない。東京の場合、ホタルは記録が残る昭和63年以降、トノサマガエルも平成元年以降、一度も観測されていない。「光源」となる清流も、合唱の「音源」となる田園も確かに縁遠くなった

 ▼都心で時節を律義に守っているのはアジサイぐらいか。皮肉にも「移り気」の花言葉を持ち、別名を「七変化」や「八仙花」という。思えば消費税率10%への引き上げをめぐり「再び延期することはない」との弁を聞いてから、先送りの決断に2年とたっていない

 ▼次の二十四節気は21日の夏至、翌22日は参院選の公示日になる。〈迷うあじさい七色変わる、色が定まりゃ花が散る〉という。与党も野党も、「七色」への言い分はあろう。政治の季節、有権者たるわれわれがまず感度を磨かなければなるまい。