水素水

日本医科大の太田成男教授の主張には明らかな誤認がある 公益財団法人食の安全・安心財団理事長・唐木英明(東大名誉教授)

 最初に、水素水による治療研究については、まだ研究途上ではあるが、いくつかの病気の治療に有効である可能性が認められている。消化管内の水素水から水素がどのように血中に入り、標的細胞に達するのか、水素の作用は活性酸素消去と関係があるのかなど明らかにすべき課題は多いが、研究自体はまじめな科学であり、私自身、水素水による治療研究をニセ科学と考えたことはない。

 他方、産経ニュースが取り上げたのは、「健康食品としての水素水」である。健康食品を使うのは病人ではなく健康な成人であり、その目的は病気の治療ではなく、健康の維持・増進である。だから、健康食品の機能を表示するためには「健康な成人での臨床試験」が必要である。間違ってはいけないのは、病人を使った治療の研究を健康食品の健康維持機能の根拠にすることが認められていない点である。もし科学的根拠が得られれば、その製品は特定保健用食品(トクホ)あるいは機能性表示食品として、その健康維持機能を合法的に表示することができる。これが国による「食薬区分」の規制である。

 それでは、水素水が健康食品としての効能を示すことを示した「健康な成人での臨床試験」はあるのだろうか? 現在のところ、予備的な研究はあるものの、健康食品としての効能を示すような確実な研究結果はない。だから、トクホあるいは機能性表示食品としての水素水は存在しない。科学的根拠なしに効能があるような宣伝を行えばこれは明らかなニセ科学であるだけでなく、処罰の対象になる。これが水素水ビジネスの実態であることを伝えたのが、産経ニュースである。