浪速風

裁判員がいなくなる

デミ・ムーア主演の米映画「陪審員」は、彫刻家でシングルマザーの女性が、殺人罪に問われたマフィアのボスの裁判の陪審員長に選ばれる。数日後、作品を買いたいという男性が現われ、紳士的な態度に惹(ひ)かれるが、実は殺し屋だった。「ボスを無罪にしなければ、息子の命はない」

▶福岡地裁小倉支部で開かれた暴力団工藤会系組幹部の殺人未遂事件の裁判員裁判で、被告の知人とみられる男が閉廷後に複数の裁判員に「よろしく」と声をかけた。恐怖を感じたのは想像に難くない。工藤会は唯一の「特定危険指定暴力団」で、一般市民をも攻撃対象にしてきた凶悪組織なのだ。

▶なぜ裁判員裁判にしたのか。裁判員法は「裁判員やその関係者らに危害が加えられるおそれ」を除外の要件にしており、実際、工藤会関係で裁判官だけで審理した例がある。公然と威圧されたのでは、冷静な判断はできまい。正義のために勇気を、と求めるのは酷だ。これは映画ではない。