都市を生きる建築(65)

迷宮・地下街を養分にした樹木を表現…大阪富国生命ビル

 吹き抜けに面して「フォレストウォール」がある。ピクセル加工された白神山地の森の画像をガラスに挟み込み、見る角度によって緑の光景が豊かに変わる。

 人工的な素材が醸し出す有機的な表情は他にも見られる。ロビー天井では工業製品のアルミエキスパンドメタルをランダムに張り分けて、揺らめくような効果を醸し出している。屈折した外壁は通りを歩く人々を映し出し、仕込まれた鏡面が思わぬ方向からの光をもたらす。

 ペロー氏は代表作のフランス国立図書館で、ガラスに囲まれた広大な中庭を樹木で埋め尽くした。ここでも建物の全体と細部の双方において、自然と人工の関係を再解釈し、生命力あふれる大阪らしさを、従来とは異なった形で象徴している。

 活性化している都市は決まって、その場所の特性を新鮮に受け止め、新たな形で見せられる「外の眼」の持ち主を的確に起用している。大阪富国生命ビルは建築家がまさにその一人であることを示す。対象を愛すると同時に、広い視点で捉えられる専門家に仕事を任せられるかどうかは、これからの大阪にとっても鍵となりそうだ。(倉方俊輔/建築史家・大阪市立大学准教授)

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