キラキラした少女マンガの設定に二階堂が登場したとたん、にわかに事件のにおいが…ということもなく、案外、違和感なく溶け込んでいるのに感心する。「3回まわってお手から、ワンだな」と恭也に言われ、さんざん悩んだ後でスカートをひるがしてくるくるっと周り、「わん」という際のなんとかわいいことか。聞けば、二階堂は衣装合わせの際に「血糊の付いてない制服を着られるなんて」と感動していたという。
恭也は、エリカをイヌ呼ばわりしてこき使い、優しい言葉の一つもかけない。しかし、エリカは彼が抱えた孤独と不器用な愛情表現に気づき、少しずつひかれていく。
正直に言って、やや分かりにくい気持ちの流れではある。しかし、例えば、親友にひとしきり恭也の悪口を言い募った後、「…好き…だと思う」とぽつりともらす場面や、恭也に「だからもう、イヌはやなの!…恭也くんのこと、好きだから。本気で好きになっちゃったから!」と告白する場面。これを歴戦で鍛え上げた演技力でやられると、その圧倒的なリアリティーに、「そうか、好きになったか」と思わず納得してしまうのだ。