編集日誌

美学のわな

良かれと思ってしたことが裏目に出たのか、批判を恐れた安直な判断だったのか。熊本地震は庁舎の耐震化が遅れて損壊した5市町で復旧が停滞する事態を招いたが、財政難を背景に学校施設の耐震化を優先した宇土市の例は深く考えさせられた。

子供の安全・安心を確保することに異論は出ないが、行政職員が働く庁舎の耐震化を先行すれば反発を受ける。大地震はすぐに起きないとの楽観的な思い込みも相まって、震度6強程度に耐えられないとの本庁舎の耐震診断がないがしろにされた。

庁舎より学校の耐震化を図る判断を「美学」と考えていた蒲島郁夫知事は地震後、「美学は危険だ」と語った。財源不足はどの自治体も同じだ。大地震はまだ来ないとたかをくくっていると美学のわなにはまる恐れがある。

(地方部長 徳永潔)