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七回忌を迎えた宇都宮市出身の作家、立松和平さんをしのび、1月末、立松さんの小説を原作とした映画「遠雷」(昭和56年)が市内の映画館で上映された。立松さんが若き日に制作に関わった足尾鉱毒事件の記録映画とともに見た。
芸術性を重視し、実験的な作品も輩出した日本アート・シアター・ギルド(ATG)の作品だが、後期作品は挑戦的ではあっても難解なことはなく、若者がギラギラした青春ドラマだ。宇都宮の郊外でトマトを栽培する農家の青年を永島敏行、見合い相手を石田えりが熱演。色っぽい藤田弓子、ワイルドな風貌の森本レオ、弱々しく気味の悪い蟹江敬三ら名優たちがその後に定着したイメージとは違ったキャラクターを演じているのも面白い。立松さんも農協職員役でちょっと出演している。
団地のすぐ近くでトマト栽培を続ける青年は、土地の売買を持ちかける不動産業者をすごい剣幕で追い返すのだが、舞台となった瑞穂野団地(宇都宮市瑞穂)の近くには農地は見当たらない。現実ではこの辺りの農地は全て住宅地や工業団地に変ってしまったのだろうか。瑞穂野団地の脇は江川が流れ、両岸は遊歩道が整備された「江川遊水公園」となっている。