田中靖人の台湾情勢分析

馬英九前総統はなぜ知日派から反日に転じて「有終の美」を自ら捨ててしまったのか?

 任期満了直前に起きた沖ノ鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内での漁船拿捕を受けた対応については、論をまたない。馬政権はこれまで留保してきた態度を一変させ、沖ノ鳥島は「岩」でありEEZを設定できないと主張。漁民保護を名目に、巡視船だけでなく軍艦の派遣まで決めた。外交部(外務省)の担当者らが総統府の突然の方針転換に追いつかず、反応が1日遅れになったことも、馬総統の独断を感じさせる。

 5月6日、総統府で自民党の日台若手議員連盟代表団と面会した馬総統は「沖ノ鳥礁の面積は、この広間(会見場)の8分の1にも満たない」などと主張。日本側が巡視船派遣に「驚きと失望を禁じ得ない」と強い調子で抗議し、出席者によると「相当厳しいやりとり」となった。日本側は「馬総統の下での日台関係の目覚ましい功績が大きく損なわれるのではないか」とも述べたが、正に2期8年の馬政権下の日台関係を総括する指摘といえるだろう。(台北支局)

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