こうした意見を踏まえてか、特命委は今回打ち出した「考え方」について「性差そのものを否定する『ジェンダー・フリー』論とはまったく異なる」と位置づけ、「保守」としての支援のあり方を模索する姿勢を示した。
また、一部自治体で導入されている「パートナーシップ制度」については、「国民の理解の増進が前提で、是非を含めた慎重な検討が必要」と言及。支援という美名のもと、何事も無批判に進めるわけではないとの立場を示した。
そこには、東京都渋谷区が条例で同性間のパートナーシップを「男女の婚姻関係と異ならない程度の実質を備える」と定義した問題などに対する懸念も、透けてみえる。
6月1日にパートナーシップ宣誓の受領証交付が始められる宝塚市。今年度予算で、電話相談窓口の開設や、啓発のための絵本や図書を市立幼稚園や保育園、市立小中学校などに設置することを盛り込んだ。
「パートナー証明の受領証や幼少期からの教育という形でまず一歩を踏み出し、LGBTを尊重することを意思表明し、当事者に寄り添いたい」と市の担当者は狙いを語るが、「保育園や幼稚園からの教育というのは時期尚早だ」と疑義を呈する声も根強い。
実際、市のこうした施策について、今年4月下旬までに市内外から寄せられた意見は2560件。内訳は賛成は13件、反対が2547件だったという。
「手段と目的が逆転」
「政府や地方自治体はLGBTへの理解促進に向け取り組む責務がある」
特命委は「考え方」にこう明示した上で、政府に対して環境の改善や社会的支援の充実に向けて要望する33項目もまとめた。社会的支援や人権啓発にとどまらず、教育現場でいじめや差別を許さない生徒指導を求め、職場でのハラスメント防止、採用での不当な取り扱い防止を記載。災害避難所での対応や、不動産賃貸の際の配慮を求めることにまで及んでいる。ジェンダー・フリーを志向するのでなく、現行法制度の中で理解を深めていくものだ。