「わが国では中世より、性的指向・性自認の多様なあり方について必ずしも厳格ではなく、むしろ寛容であったといわれる。歌舞伎の女形など性別に固定されないあり方を楽しむ文化が伝統芸能の中に脈々と息づいている」
特命委は、男女が入れ替わる平安時代後期の物語「とりかへばや物語」も一例に挙げた上で、次のように課題を指摘した。
一定の要件を満たせば性別変更の審判を受けられることを定めた「性同一性障害特例法」が制定されるなどの近年の取り組みはあるものの、「いまだにいじめや差別などの対象にされやすい」と。
「カムアウトする必要のない社会」
文部科学省は一昨年、初めて性同一性障害についての調査を実施。その結果、全国の小中学校と高校で、性別への違和感などを学校に相談していた児童・生徒は606人だった。
児童・生徒の状況については「周囲も受け入れ、問題なく生活している」との回答がある一方、「不登校状態となり、保健室に通うことが多い」「気持ちの浮き沈みがあり、自傷行為をしている」との記述もあったという。
こうした状況を受け、今年2月、自民党の稲田政調会長の指示で特命委が立ち上がった。稲田氏は昨年9月、米国ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で行った講演でこう述べている。
「すべての人を平等に尊重し、自分の生き方を決めることができる社会をつくることに取り組みます。個人は生まれつきさまざまな特徴を備えています。そのことを理由としてその人が社会的不利益や差別を受けることがあってはなりません。保守政治家と位置づけられる私ですが、LGBTへの偏見をなくす政策をとるべきと考えています」