追悼・蜷川幸雄さん死去

常にフェアに接し、愛情を注いで下さった。だからどんなに怒られても僕は好きだった 「もっと戦え」激励に号泣 演出家・藤田俊太郎

 初日に観劇してくれ、「芝居、良かったよ」と初めてお褒めの言葉をいただいた。さらに、「もっと他者と向き合え。良い瞬間や自己は疑って、戦え」とも。その言葉は、蜷川さんが繰り返し、稽古場で口にしてきた言葉でした。初めてその激励が自分に向けられたことがうれしくて、僕は電話を切った後、1人で泣きました。

 かつて、「明日、力を貸してくれ」という言い方で自宅の書斎に呼び出し、段ボール数箱分の本を譲ってくださったこともあった。絶版の画集や憧れの写真集など、貴重な本を前に興奮する僕に、蜷川さんは本に埋もれながら「なかなか捨てられないから、もらってくれないか」とおっしゃった。ためらうと、「だったら貸すよ、これで気が楽だろう」と、後輩に惜しみなく、その知識も分けてくださったのです。