刑事裁判の訴訟費用〝踏み倒し〟過去5年で5億円超 納付義務被告の6人に1人

視点「逃げ得許さず、徴収工夫を」

 「訴訟費用は支払わなくてOK。被告人にはそう伝えている」。ある弁護士はそう声を潜めた。長年にわたり問題が放置されてきた訴訟費用の未納問題。公正さが厳しく問われるべき刑事裁判の手続きだけに、現状は言うまでもなく改める必要があるだろう。

 ただ、識者らは「徴収額以上の費用がかかっては仕方がない。少ないコストで納付率を上げる工夫を考えるべきだ」と口をそろえる。

 採算を度外視して徴収率を上げるのではなく、資力のある人間から確実に徴収する逃げ得を許さない仕組み作りが重要だ。

 取材を通じて、法曹関係者からは「早期の支払いに対しては費用を減額する」などの方策も挙げられた。

 「問題が注目されると『それだけ未納が多いなら自分も払わない』という人が出てくる」と懸念する声も聞かれたが、関係者が知恵を絞り、現実的な解決策を検討すべき時期に来ている。(時吉達也)

 【用語解説】訴訟費用 国選弁護人への報酬をはじめ、裁判に出廷した証人、通訳の旅費・日当などの費用。貧困を理由に支払いが不可能と裁判所が判断した場合を除き、有罪が確定した刑事被告人に納付義務がある。刑事訴訟法の規定に基づき、徴収の実務は罰金や追徴金などと同様、検察が担当している。

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