熊本地震

引っ込み思案が地震で変わった…長い髪切り一念発起した東海大の女子学生

 「こんな所に入ったら死んでしまう」。裂けた壁から屋外が見えていて、天井の照明は今にも落ちそうだった。中に入るのをかたくなに拒む学生も多かった。

 トイレの事情も過酷だった。「体育館の裏手でするしかなく、特に女性には耐えられなかった」。暖を取るため毛布にくるまり、身を寄せ合って夜を明かしているとき、東海大生が犠牲になったことを知った。

 「以前は引っ込み思案な性格だったが、死と隣り合わせの地震を経験して考え方が変わった」と下川さん。大学が休校し、熊本市の実家に戻った4月下旬、ボランティアをしようと思い立った。県内外に散り散りになった友人らが、それぞれの地元で自主的に被災地支援の募金活動をしていることに触発されたのだ。

 腰まで伸ばしていた長い髪を「現場で邪魔になるから」と30センチ以上切り、ショートカットにした。「私も復興の力になりたい」。そんな決意の表れだった。

 現在、熊本市東区でがれき撤去要望の受付や、ドリルやヘルメットといった備品の貸し出し業務を担当しながら、遅々として進まない南阿蘇村の復興が気がかりでならない。

当たり前の日常を

 「熊本市や益城町などに支援の目が向けられているが、私たちが過ごした村のことも忘れずに助けてほしい。そのためにも、あの日に村で起きたことを知ってもらわないと」。友人らに呼びかけて倒壊した建物などの写真を集め、自らの体験談とともにフェイスブックで公開している。

 「当たり前のように友達と会い、大学で勉強できる幸せを取り戻したい」

 遠くに阿蘇の山々を思いながら、1日も早く日常を取り戻そうと活動を続けている。 

(井上浩平)

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