主張

研究用原子炉 審査に停止が必要なのか

 京都大と近畿大の研究用原子炉2基の今夏以降の運転再開に見通しが開けた。原子力規制委員会によって、新規制基準を満たしていると認められたためである。

 原子炉の安全研究や原子力技術者の育成に不可欠な装置なので、でき得るかぎり速やかな再稼働が望まれる。

 平成26年2月と3月に運転を停止して以来、すでに2年以上が経過している。人材育成に及んだ負の影響は甚大だ。

 原子炉とはいえ、大学の研究炉なので、規模は超ミニチュア級といえるほど小さい。京大原子炉実験所(大阪府熊取町)の炉の熱出力は100ワット、近大原子力研究所(同東大阪市)の炉のそれは1ワットにすぎない。

 一般的な原発(電気出力100万キロワット)の熱出力は、30億ワットなので、天と地ほどの開きがあるが、福島事故を機に超ミニチュア級の研究炉も、そのために策定された新基準に適合しないと稼働できなくなったのだ。

 運転停止前は、他大学の学生を含め、年間計約300人の学生が両大学の施設で、ウラン燃料の取り扱いや原子炉運転の経験を積んでいた。その道が閉ざされたため、近大では研究炉を持つ韓国の大学に学生を行かせて実習するなど苦肉の策を講じてきた。

 原子炉の安全の研究にも支障が出ている。

 安全性向上のために、より厳しい基準への適合を求められるのは当然としても、熱出力1ワットといった研究炉で、炉心溶融などの周辺に重大な影響を及ぼす過酷事故が起きるのか。

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