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欧米の社会は刺青(タトゥー)に対して寛容であり、多くの競技で手足やボディーに自由気ままに入れるアスリートが目立つ。4年後に開催される東京五輪で海外から訪れるのはそんな選手のみならず、タトゥーを文化の一部としてとらえる外国人観光客も多い。日本の温泉施設や銭湯では「入れ墨のある方、ご遠慮願います」といった警告文で排除してきたが、ここにきて受容する動きも出てきた。ルールに厳格といわれる日本人が刺青を「自己表現」や「ファッション」として受け流す日は訪れるのか。
刺青をさらけ出した時代
刺青文化が確立されたのは江戸時代中期といわれ、浮世絵や春画などに描かれてきた。任侠映画にも決まって登場するが、必ずしも「裏社会」と結びついてきたわけではない。
神戸大の宮下規久朗教授(美術史)の『刺青とヌードの美術史』(NHKブックス)によると、幕末から明治初期にかけて、往来を行き来する車夫や職人たちが刺青をごく普通にさらけ出していた。当時の人々は刺青に反社会性ばかりを見てきたわけではないという。
旅館運営の星野リゾート(長野県軽井沢町)が、小さなタトゥーを隠すための専用のシールを対象の宿泊者に配布する制度を導入した。外国人観光客の増加を視野に、入浴に関する新しいルール作りへの実験的な取り組みとして今後の動向に注目したい。
首都圏から近い「名湯」で知られる温泉の場合、刺青は行政からの指導もあって基本的にNGだが、事前にチェックするわけにもいかず客の良心に任せているという。また、タトゥーを入れた客への対応として、他人に裸をさらさないで済む「貸し切り露天風呂」のある施設を薦めているという。