産経抄

女王陛下の発言に込められた中国へのメッセージ 5月13日

 フィンガーボウルは、果物などを食べた後、指先をすすぐ水の入った器である。使ったことがなくてもなじみがあるのは、こんな話をどこかで聞いているからだろう。

 ▼英国のエリザベス女王が、ある国の賓客(ひんきゃく)を晩餐会(ばんさんかい)でもてなした。欧米のマナーに疎い客は、フィンガーボウルの水を飲んでしまう。女王は何食わぬ顔で同じように振る舞った。客に恥をかかせないためである。

 ▼在位64年に及ぶエリザベス女王は、100組を超す世界中の国賓たちをもてなしてきた。そんな「最強の外交官」の口から出ただけに、余計に驚かされる。「とても非礼だった」。昨秋英国を公式訪問した、中国の習近平国家主席一行についての発言である。

 ▼バッキンガム宮殿で開催された園遊会での会話を、テレビカメラのマイクに拾われてしまった。女王の「うっかりミス」とは考えにくい。というのも、すでに習主席の訪英中に、いくつかの「伏線」があったからだ。王室主催の晩餐会での習主席のスピーチは、おなじみの日本批判を交えた内容だった。

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