蜷川幸雄さん死去

「俺は川口っ子」故郷愛した偉才 昨年10月に本紙取材

 22年に文化勲章を受章した際の会見でも「俺は川口っ子。反中央、反エリート(の気持ち)があるのが川口育ち」と誇らしげに口にした。「埼玉、川口に育てられ、皆さんに喜んでもらえたかな」「少しは恩返しができたかな」。厳しい演技指導で知られる蜷川さんは、柔和な笑顔で故郷への感謝を語った。

 彩の国さいたま芸術劇場では、高齢者演劇集団「さいたまゴールド・シアター」を立ち上げるなど先進的な試みを続け、12月に予定している群集劇「1万人のゴールド・シアター2016」は、20年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れていた。「本当はハンコがないとできないようなことでも、まずやってみる。世界に例のない劇場だと思う」。同劇場への愛着を、最後の本紙インタビューでそう語ってもいた。

 80歳の誕生日を機に自身の作品の回顧展が同劇場で開かれていることに触れられると、「俺、そういうのに興味ないんだ。今、今、今」と力強く答えた。その言葉通り、最後まで未来を向き、演劇への情熱が絶えることはなかった。

(菅野真沙美、川峯千尋)