政界徒然草

長崎・諫早になお残る菅直人元首相の「負の遺産」がようやく払拭へ 和解へ動く安倍政権の本気度は?

 問題が混迷を深めたきっかけは、諫早湾関連訴訟で唯一の確定判決となった平成22年12月の福岡高裁の判決だ。政府は裁判中に開門に伴う被害を十分に主張しなかったため、開門を命じる判決が出た。さらに、当時、民主党の菅直人首相が「私なりの知見」という科学的根拠もない独断で最高裁に上告せず、判決が確定してしまった。

 当時、開門した場合の漁業や農業への影響、対策工事費用などを科学的に調査した環境アセスメントの公表を控えていた。高裁判決後に公表した5800ページに及ぶ調査結果は、開門しても有明海全体の潮流や水質などは改善しないことが明らかだった。

 菅氏が上告し、この調査結果を踏まえて最高裁で争っていれば、問題がもっと早く収束に向かっていた可能性を指摘する法曹関係者は少なくない。「開門すれば農業被害や洪水の危険が増す懸念があったから地元住民は上告を求めた。それなのに菅氏は一切耳を貸さなかった。国家のあり方として無責任甚だしい」。当時を知る国会議員は、そう吐き捨てた。

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 安倍晋三政権が和解に向けて動き出したのは、法治国家として「法の支配」を重視する姿勢がある。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で、沖縄県民の反発を招くのを承知で政府は訴訟に踏み切り、司法での最終決着にこだわってきた。「県民の反発にひるんで移設計画を撤回すれば普天間飛行場の危険除去が遠のく」(官邸筋)という現実路線を重視するためだ。

 諫早湾干拓事業をめぐる訴訟も漁業者の政府に対する不信感は根強い。だからこそ、政府は法理にのっとった解決を目指しているのだ。地元住民を巻き込んだ長年の対立が和解に向けて前進すれば、夏の参院選を控え、安倍政権の実行力を示す好機でもある。

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