野口裕之の軍事情勢

日本による豪州への潜水艦売り込みを阻止したのは仏が誇る通信傍受網だった!? 貧乏くじを引いたのは…

米軍機密も潜水艦の対中輸出のために暴露?

 豪州の次期潜水艦に関し、フランスは手段を選ばなかった。例えば2015年、フランス国防省がネット上に発表したリポート。あろうことか、《演習で、フランス海軍の攻撃型原子力潜水艦(SNN)が単艦で、米海軍の空母を含む空母打撃群の半分を撃沈した》などと、衝撃的機密の暴露を平然としてのけた。リポートはネット上より直ちに削除されたが、中国の軍事関係者が見逃すワケもなく、さっそく中国の軍事誌に中国海軍潜水艦学校教授による《なぜ、フランス海軍のSNNは、米空母打撃群の対潜多層防御陣を突破できたのか》などの分析が掲載された。

 フランス国防省のリポート削除は米国防総省の要求だと考えられるが、小欄はフランス側の「邪心」を想像してゾッとした。中国の軍事関係者は、東シナ海~西太平洋にかけての浅海に、排水量の小さい仏製SNNが合理的だと、度々評価している。フランスは同盟国・米国を裏切っても、自国のSNNを中国を利用して宣伝したのではないか? いや、中国はあえてフランスの宣伝に一役買ったとみるべきなのか?

最大の受益国・中国と国益を損なった豪州

 実際、豪州が次期通常動力型潜水艦をフランス製に選定した直後、地元メディアは全12隻を20年かけて逐次就役させる過程で、一部をSNNに転換する可能性を報道。前提として、小ぶりのフランス製SNNをさらに小型化し、通常型潜水艦の船体とする「互換性」を報じている。現時点での受益国はフランスだが、将来的に最大の受益国は中国。最も国益を損なうのは豪州だ。

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