五郎丸フィーバーの始まりは「動きの文字化」からだった-。ラグビー日本代表が昨年、W杯で世界一の経験もある強豪・南アフリカを破った一戦は、世界をあっと言わせた大金星だった。その立役者の1人、五郎丸歩選手はいまや日本の顔ともいえる存在。キックの前に見せた独特の動きは国民的ポーズとなり、昨年の新語・流行語大賞でもトップテンにランクインした。この動きを五郎丸選手とともに作り上げたのが、日本代表のメンタルコーチを約3年半務めた園田学園女子大人間健康学部の荒木香織教授(43)。米国で8年間スポーツ心理学を学び、博士号も取得したスペシャリストで、自身も陸上短距離の元アスリート。米留学中にはラグビー経験もあるという荒木氏に開発秘話を聞いた。
五郎丸「ポーズ」ではない
「験担ぎ? 違います。精神統一というのも当てはまりませんね」
荒木氏によると、五郎丸選手の独特の動きは心理学の分野で「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼ばれる。何らかの行動(パフォーマンス)を起こす前(プレ)に行う決めごと(ルーティン)といったところで、一連の動きを完了させることが重要。祈るようなあのポーズだけを真似しても、何の意味もない。
改めて、ゴールキックでみせる五郎丸選手のルーティンを確認しよう。
(1)ボールをタテに2回転させてからセット
(2)右手を前に出しながらゴールポストの位置を確認
(3)ボールの真後ろに3歩下がり、さらに左へ2歩
(4)その位置で、両手の指を胸の前で組み、腰を引き気味に立つ
(5)右手を2回、右斜め下から中央に向かって振った後、再び両手指を組み、ゴールポストの方向を見る
(6)そこから8歩のステップを切り、ボールを蹴る