海底資源「夢の泥」はいま(1)

脱・資源貧国、日本の切り札「レアアース泥」に中国の触手 南鳥島南方で探査契約

 22年9月7日の沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしてきた事件。日本でレアアースという用語が有名になったのはこの事件がきっかけだった。日本の司法当局が漁船の船長の勾留延長を決めると、中国は自国の陸上で生産されるレアアースの対日禁輸という外交カードを切った。中国は当時、世界のレアアース需要の97%を供給していた。価格は急騰し、日本は中国に翻弄された。

 このとき東大准教授だった加藤はすでに、東大の研究所にあった試料から太平洋沖の水深4千メートル以上で採取された泥にレアアースが高濃度で含まれることをつかんでいた。研究室の学生ら9人と、数年かけて集めた2千を超える泥を分析し、2カ月で論文にまとめた。「太平洋の深海泥にレアアース」。23年7月、論文は世界的科学誌「ネイチャージオサイエンス」に掲載された。加藤がこの発見の公表を急いだのは、レアアース価格をコントロールしていた中国を押さえ込みたい一心からだった。不穏な動きがある。