【産経抄】失われた「ひとみ」 5月1日(1/2ページ) - 産経ニュース

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産経抄

失われた「ひとみ」 5月1日

 ヒンズー教の神シバには両目に加えて額にもう1つ目があった。

 ▼神話によると「第3の目」は普段閉じられ、ひとたび開けば雷電を発して万物を焼いたとされる。シバの瞑想(めいそう)は幾星霜に及び、妻の女神パールバティーは迷惑したらしい。すねた妻が両手で夫の目をふさぐと、世界は咫尺(しせき)を弁ぜぬ闇に閉ざされた。慌てたシバはもう1つの目を見開き、光を取り戻したとの挿話がある。

 ▼光であれ闇であれ、神話が解き明かそうとしたのは世の成り立ちだろう。現代科学が目指すものも変わらない。〈正体は君だつたのかヒッグス君宇宙、生命(いのち)のなべて重きは〉田村富夫。万物に質量を与えるヒッグス粒子しかり。アインシュタインが100年前に存在を予言した重力波の検出しかり。宇宙誕生の謎という光源を求めて、人類は夜空を仰いでいる。

 ▼光ならぬ不可視のエックス線を、その「目」で拝みたかったろう。地球との交信を絶っていた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の天文衛星「ひとみ」である。ブラックホールの出すエックス線を捉え、銀河の進化や謎に包まれた暗黒物質の究明につなげる予定だった。制御に目端を利かせるどころか人為的なミスが重なり、観測を始める前に壊れたという。