天文衛星ひとみ、運用断念 JAXA、人為ミスなど複合要因

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は28日、通信が途絶したエックス線天文衛星「ひとみ」の運用を断念すると発表した。人為的なミスなどの複合要因で異常な回転が発生し、電力供給に不可欠な太陽電池パネルを喪失したと推定、復旧は困難と判断した。ブラックホールなどの観測を目指す国際計画は白紙化した。

 ひとみは2月にH2Aロケットで打ち上げられたが、3月26日から地上で電波を正常に受信できない状態が続いていた。これまでに10個以上の破片に分裂したことが判明している。

 JAXAの分析によるとひとみは3月26日、姿勢制御系ソフトの誤作動で機体が回転を始めた。地上から姿勢を修正する指令信号を送ろうとしたが、人為的ミスで誤った信号を発信。ミス防止システムも機能せず回転速度は逆に上昇、翼のように伸びている太陽電池パネルが遠心力で全て根元から脱落したと推定した。

 また、トラブル直後に短時間ずつ数回受信できたとしていたひとみからの電波は、実際は別の衛星の電波だったと結論付けた。

 JAXAの常田佐久理事は会見で「国民や国内外の協力機関、天文学研究者に深くおわびする」と陳謝した。

 ひとみはJAXAが米航空宇宙局(NASA)などと共同で開発した最新鋭のエックス線天文衛星。日本側の開発費は310億円。順調なら5月にも本格観測を開始し、国際協力で宇宙の成り立ちや進化の謎の解明に挑む計画だった。

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