浪速風

地震も事故も正当に怖がれ

昔、中国の杞(き)の国に、天が落ちてきたらどうしよう、地面が崩れたらどこへ逃げたらいいだろうと心配して、夜も眠れず、食事も喉を通らなくなった人がいた。「杞憂(きゆう)」の故事である。取り越し苦労の意味で用いられるが、はたして無用の心配だろうか。

▶神戸市北区の新名神高速道路の建設現場は、何度か通ったことがある。橋桁が落下した国道176号は普段から交通量が多く、中国自動車道が渋滞すると迂回(うかい)路としてさらに混雑する。事故当時は工事に伴う通行止めにはなっておらず、下を走る車が巻き添えにならなかったのが不思議に思える。

▶重さ約1350トンもの橋桁の落下は、天が落ちてきたようなものだろう。地は熊本地震で崩れたばかりだ。杞憂に終わろうと、あらゆる事態を考えておかなければいけない。再び寺田寅彦の警句を引く。「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがるのはなかなかむつかしいことだ」