ビジネスの裏側

第2のエネルギー革命目指す「水素の岩谷」の野望、採算度外視でFCV普及に挑む

 ■なるか「水素の岩谷」

 次世代エネルギーとして注目されている水素だが、岩谷産業がビジネスにしたのは昭和16年と、何と戦前にさかのぼる。

 創業者の岩谷直治氏が工場の煙突から排出されたまま空気に消えていく水素に注目し、「有効に活用できないか」と考えたのが原点だ。石炭を蒸し焼きにしてコークスをつくる際などに排出されるガスに含まれる水素を取り出し、工場など企業に販売するビジネスを考案。石油精製や製鉄所などに向けた産業用として水素を販売。現在は天然ガスから水素を取り出すのが主な製造方法で、国内のシェアは7割を握るトップ企業だ。平成18年、圧縮した水素よりも約10倍の輸送効率がある液化水素がより低コストで量産可能になったことも水素ビジネスを拡大させた。

 岩谷産業が昭和28年、薪や炭に代わる燃料として家庭用LPガスの供給を始めた。薪や炭をかまどにくべて火をおこすため、座り込む必要がなくなり、「台所革命」と呼ばれた。このため牧野明次会長は「今度は水素社会を実現することで第2のエネルギー革命を起こしたい」と意欲をみせる。

 水素エネルギーは二酸化炭素が排出しないうえ、海水などから無尽蔵に取り出せることから資源小国の日本で期待が高まっている。風力など再生可能エネルギーでつくった電気で水を分解して生成する手法も開発が進み、環境に優しい次世代エネルギーとしても注目されている。

 日本の水素ビジネスの老舗の岩谷産業は「社名は産業界では知られているが、一般の人にもっと知ってほしい」(広報担当者)と話している。

 水素社会が現実のものとなれば、「水素の岩谷」としてその名が知れ渡るかもしれない。今は採算に合わなくても、そのための先行投資なのだ。