浪速風

「またあすもありうる」を忘れずに

山荘が巻き込まれた土砂崩れ現場で、続けられる行方不明者の捜索=18日午前9時6分、熊本県南阿蘇村(本社ヘリから)
山荘が巻き込まれた土砂崩れ現場で、続けられる行方不明者の捜索=18日午前9時6分、熊本県南阿蘇村(本社ヘリから)

JR大阪環状線大正駅の近くにある「大地震両川口津浪記」の石碑には、安政元(1854)年旧暦11月5日の安政南海地震の教訓が刻まれている。実は前日、正確には32時間前にほぼ同じ規模の安政東海地震が発生し、余震が続いていた。碑文を現代語訳で引用すると。

▶「水の上なら安心だと船に乗って避難する人もいたところに、大きな揺れが襲った。家々は崩れ落ち、火災が発生した。やがて日が暮れるころ、雷のような音とともに津波が押し寄せてきた」。熊本地震でも28時間後にさらに強い地震が起き、被害が拡大した。気象庁はこちらが「本震」で、最初のは「前震」だったと発表した。

▶余震は本震より強くないと思われたから、虚を突かれた。前述の石碑には「年々文字よみ安きよう墨を入れたまふべし」とあるが、今回の教訓も忘れてはいけない。「きのうあった事はきょうあり、きょうあった事はまたあすもありうるであろう」。寺田寅彦の警句である。

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