石原慎太郎 日本よ

伝統が破壊されることで民族の本質だけは決して失いたくないものだとしみじみ思う…

 国際政治学者のハンチントンは世界の文化は大方キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、三つの宗教傘下の文明に大別され得るが日本の文化だけはその埒外(らちがい)にあるといっていた。

 それは日本の独特な風土が培った日本人の感性に依(よ)るものだろうが、確かに日本の文化の特性は極めて特異なものといえそうだ。例えば多くの日本人が好きな「侘(わ)び」とか「寂(さ)び」といった風情は他国の国民の理解というよりも、その以前に感得しがたいものに違いない。

 例えば世界で最も短い詩形、僅か五七五の言葉で成り立つ俳句や、小さな茶碗(ちゃわん)に入れる茶の味わいのために特殊な部屋を構え特殊な作法によって茶を入れるといった伝統は他の文明の中で成り立つことはあり得まい。

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