石原慎太郎 日本よ

伝統が破壊されることで民族の本質だけは決して失いたくないものだとしみじみ思う…

 世界が時間的物理的に狭小なものになってきた今日、グローバライゼイションなる動向の中でかつてこの国には在り得なかった出来事が氾濫してきている。異常に衝動的な犯罪、夫婦して娯楽に出かけるために邪魔になる幼い子供を檻(おり)にとじこめたまま殺してしまう親たちを駆り立てる衝動なるものは想像もつかない。世界化なるものは人間たちの欲望をそれほど平均普遍化し助長してしまうものなのだろうか。そしてそれは民族の特性を疎外し弱体化し日本人の持つしなやかな強さまでを淘汰(とうた)してしまうのだろうか。

 風俗なるものは所詮一時的なものに過ぎず、世界化なるものが何をもたらそうと私たちは己の持つ本質的なものまでを失うつもりはない。余計な連想かも知れないが最近の相撲を眺めていてもそう思う。外国人の横綱が下の力士に平気で張り手をかます。中には相手の顔の真ん中を張って鼻血を出させて突き飛ばす。彼らが憧れてみせる双葉山は決して張り手なぞしなかった。無類の大関だった前田山は張り手をするというので嫌われ出世が遅れたものだった。

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