本郷和人の日本史ナナメ読み

家康カンパニーは平和で安心な「ホワイト企業」

国立公文書館が所蔵する北条本『吾妻鏡』 (同館ウェブサイトから)
国立公文書館が所蔵する北条本『吾妻鏡』 (同館ウェブサイトから)

■ホワイト企業・徳川の文化貢献

いま学界の主流は「織田信長は、特別な戦国大名では『ない』」という評価です。それはおかしい、信長が特別じゃなければ「天下統一」はないでしょ? と反論すると、いや、彼にとっての「天下」とは近畿地方を意味するんだ、とくる。いやいや、天下が日本全体を指している用例は鎌倉時代から普通にあるじゃないか、と反論しても、戦国時代に限れば、天下=畿内ですよ、と返される。まあ、信長株はどう見ても下落しているわけですね。

学界のつまはじきであるぼくは、それはおかしいでしょう、と言い続けています。分裂していた日本が一つにまとまる、という大きな変化に、ともかくも注目しようよ。その動きの中心にいた信長が、「特別でない」はずはないでしょ? と。

ぼくはかくのごとく信長を高く評価しているわけですが、でも、彼のような人が現実にいたとしたら、災厄以外の何ものでもないですよね。絶対に関わり合いになりたくない。働く先としても、信長カンパニーには就職したくない。徹底した能力主義で、小さなミスが左遷に直結する。ヘタをすると首がとぶ。小心者のぼくは、怖くて仕事に集中できない。

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