数字から見えるちば

温泉地の数、全国10位の94カ所

 ■外国人客取り込みが課題

 □ちばぎん総研調査部研究員・渡辺麻友

 環境省の調査によると、昨年3月末現在の千葉県の温泉地数は、草津、伊香保、水上などの有名温泉地がある群馬県とさほど変わらない94カ所で、全国10位だった。

 全国の総数は、5年前の3170カ所から3088カ所へと減少した。減少したのは熊本県(82→54)、青森県(150→132)、北海道(260→246)などの地方部が中心である。人口減少による利用者減や後継者難などによって、残念なことに地元住民向けの秘湯などの閉鎖や宿泊受け入れの停止が相次いでいる。

 一方で、増えたのは大阪府(34→39)、埼玉県(21→25)、広島県(59→63)などの首都圏・近畿圏・地方中核県だ。都市部への人口集中で温泉利用者が増える中、事業者側も他の宿泊施設との差別化を意識してシティホテルやビジネスホテルに「温泉」という新たな価値を付ける経営戦略を取っていることなどが影響している。

 都市部は必ずしも火山帯ではないため、温泉のための掘削を1千メートル以上も行う例が少なくない。技術の進歩で、昔に比べて掘削費用が安くなっていることも都市温泉増加の背景となっている。

 本県の温泉地は5年前比で同数だが、岩婦温泉(南房総市)など地方部の温泉旅館が廃業ないし日帰り営業化した一方、都市部で蘇我温泉(千葉市・ホテル新築)、五井温泉(市原市・ホテル新築)、成田温泉(既存ホテルが温泉掘削)が開業するなど、温泉地が地方部から都市部に向かう流れの中で、新陳代謝が起こっている。

 新時代の温泉地は、外国人旅行客の取り込みにも一役買うことになるだろう。国土交通省の予測では、訪日外国人旅行客数が昨年の1974万人から3千万人へと増えれば、本県に宿泊する外国人客は平成26年実績のほぼ倍となる509万人に達する見通しだ。

 また、現在は県内外国人宿泊者の9割以上が成田空港周辺と湾岸地域に集中しているが、外国人旅行客が少ない地域でも、温泉資源と豊かな自然、新鮮な海の幸を結びつけ、都市部に負けない誘客努力を行えば、増加の恩恵を受けることができるだろう。 (寄稿、随時掲載)

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