歴史が因果の積み重ねであるからこそ、事件と事件の間に理屈や法則が浮かび上がり、事実や記録の断片でしかないものが、時間の流れの中で有機的に絡み合い、結合しているさまを語り始める。そんな発見があるからこそ、歴史は面白く、「科学」する意義が生ずる。
進化と発生の研究も同じ。脳の発生は進化という歴史を背負っている。事実を通して、それが歩んできた道を学ぶ。それがすなわち、われわれ自身を知ることなのである。
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倉谷滋(くらたに・しげる) 昭和33年生まれ。理研・倉谷形態進化研究室主任研究員。元CDBグループディレクター。専門は脊椎動物の比較形態学ならびに進化発生学。著書に『形態学』(丸善、平成27年)、『動物進化形態学』(東京大学出版会、16年)などがある。