湯浅博の世界読解

トランプ氏が教えてくれた…「対米自立」は日米同盟と矛盾せず

 これを機に、日本では日米同盟を対米従属に置き換えて語る識者がでてきた。左派と現状維持派からの懸念で、「対米従属」を嫌う右派がトランプ発言を奇貨として、「対米自立」に向かう危険性を指摘する。自立には(1)憲法改正(2)核武装(3)日米同盟の再検討-の3点セットがあるという。

 しかし、還暦を超えて永続する同盟は歴史的にも珍しい。長持ちには秘訣(ひけつ)があり、日米外交・防衛当局者がときどきの国際環境の変化に柔軟に対応してきたからだ。日米同盟は冷戦期にはソ連からの侵攻を防ぎ、最近でも東日本大震災で「トモダチ作戦」のありがたさが身に染みたはずだ。

 まして日本は、軍事化した中国、核開発を進める北朝鮮、軍備を増強するロシアに接している。にもかかわらず、米軍庇護(ひご)下の65年で、経済力と安定性は享受できたが、自らの国を守る気概を失いつつあった。

 対米自立には、自立・自存の防衛を固めた上で日米が双務性を高め、より強固な同盟を構築するとの考え方がある。本来は日米安保条約を再改定すべきだと思うが、2015年改定の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)は、そうした考え方の延長にある。

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