iRONNA発

元少年Aの「性的サディズム」は本当に解消されたのか 立正大学文学部教授・小宮信夫

神戸連続児童殺傷事件、土師淳君の頭部が見つかった友が丘中学の現場を視察する佐藤英彦・警察庁刑事局長ら=1997年6月1日
神戸連続児童殺傷事件、土師淳君の頭部が見つかった友が丘中学の現場を視察する佐藤英彦・警察庁刑事局長ら=1997年6月1日

 神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇事件)の加害男性(元少年A)が世間を騒がしている。手記「絶歌」の出版、自身のホームページの開設、週刊誌のスクープと続いたからだ。猟奇的犯罪を再び犯すのではないかという不安も生まれている。そこで以下では、犯罪学者の視点から、元少年Aの再犯の可能性と少年法の更生システムの問題点について考えてみたい。(iRONNA

殺人の原因と再犯の可能性

 神戸家裁の少年審判では、性的サディズムが殺人の原因だったと認定された。これは、通常であれば、女性の身体的特徴(視覚的刺激)によって起こる性的興奮が、相手に苦痛を与えることで起こる性的嗜好である。

 この認定に基づき、医療少年院では性的サディズムの解消に向けた治療プログラムが行われた。そのかいがあって、少年Aは女性に関心を示すようになったという。治療効果が確認できたので、少年Aは少年院を退院していく。

 もっとも、性的サディズム自体は合意があれば犯罪にはならないので、少年Aの場合は、それがエスカレートし、人を殺したり遺体を損壊したりすることで性的満足を得る「快楽殺人」に至った点も忘れてはならない。

 エスカレートさせた要素は、単なるキレやすい性格なのか、あるいは殺人さえも表現形態とみなす自己顕示欲なのか。いずれにしても、性的サディズムが解消されたとしても、そうした要素が減退していない限り、再犯の心配がないとは言えない。

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