時代を超え愛される司馬遼太郎 没後20年、電子書籍版も人気

 没後20年を迎えた国民的作家・司馬遼太郎さん(1923~96年)がいまなお光彩を放っている。出版社が全国で合同展開している文庫本フェアは大盛況で、大阪・梅田の書店では「この国のかたち」や「街道をゆく」が特に売れているという。今年に入って26万5千部の重版にかかる作品もあれば、3年前に電子書籍化された「竜馬がゆく」は約10万回ダウンロードされるなど、「日本人とは何か」を追い求めた作家の言葉が日本人の心に広がり続けている。 (嶋田知加子)

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 ◆異例の司馬シフト

 司馬さんの命日「菜の花忌」(2月12日)に合わせて文芸春秋、新潮社、朝日新聞出版、講談社、中央公論新社が共同企画し、各書店で展開してきた文庫フェアは5社で30作品計約8万冊を送り出した。

 1月下旬からフェアを開いているMARUZEN&ジュンク堂書店梅田店(大阪市北区)は異例の対応をみせる。通常のフェアで使用する棚は1つだが、今回は3つ。担当者は「書籍の補充は毎日で、発注リストにも司馬作品は必ず入る。20~30代の若者が多いのも特徴で、『この国のかたち』や『街道をゆく』の人気が特に高い」と話す。

 司馬遼太郎記念館(東大阪市)の上村洋行館長によると、著書は長編小説44作品、短編小説156作品のほか、エッセーは1500編超にのぼるが「埋没しているものもある」といい、さらに戯曲や数多くの座談会・対談集、講演録もあるため、生涯作品数は「正確に分からない」という。

 ◆累計9789万部!

 文芸春秋は単行本や文庫など合わせて約300作品を出版。累計発行部数は実に9789万9600部(3月18日時点)に及ぶ。断トツは大ベストセラーの「竜馬がゆく」で、累計2451万9千部。2位の「坂の上の雲」は累計1960万1500部。NHKスペシャルなどで取り上げられた「この国のかたち」は、今年に入り6巻合計で26万5千部を重版したという。

 新潮社も22日時点の累計は5424万8200部にのぼる。「新潮文庫累計部数ベスト100」では、直木賞受賞作の「梟(ふくろう)の城」や「燃えよ剣」など9作品がランクイン。夏目漱石(7作品)や井上靖、松本清張(いずれも5作品)を抑え、堂々の1位だ。

 ◆「竜馬がゆく」10万ダウンロード

 司馬作品の電子書籍化も進む。文芸春秋は15作品を配信しているが、「竜馬がゆく」(8巻)は平成25年に電子書籍化され、これまでに約10万ダウンロードされた。同社プロモーション部の担当者は「歴史を知る上で時代を超えて若い方にも通じるものがあるのだろう。いろいろなきっかけを得て読み直されてきた司馬作品の魅力を今後も大事にしたい」と話している。

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