政治家が、時と場所と状況に応じて本音とタテマエを使い分けるのは当然であり、必要なことだろう。何でも思ったこと、腹の中を正直に口に出せば、政治が前に進むというものではない。29日の安倍晋三首相の記者会見と、それに対するメディアの反応がそんな実情を端的に表していた。
安倍首相は記者会見で、来年4月に予定される消費税率10%への引き上げの再延期を否定し、夏の参院選に合わせて衆院解散・総選挙を断行する衆参同日選についても「頭の片隅にもない」と言い切った。一方、記者会見後、記者たちは口々にこう言っていた。
「『頭の片隅にもない』と語ったとき、首相は口元に笑みを浮かべていたね」
そして案の定、在京各紙の30日付朝刊の関連記事は、本紙も含めて安倍首相の否定をほとんど気にも留めない書きぶりだった。
「安倍首相は、景気悪化を防ぐため、17(平成29)年4月からの消費税増税の先送りを本格的に検討する。(中略)『衆参同日選』に踏み切ることも視野に入れている」(読売新聞)