書評倶楽部

芝居の匂いがわき立つ…『かぶき曼陀羅』河竹登志夫著 興福寺貫首・多川俊映

【書評倶楽部】芝居の匂いがわき立つ…『かぶき曼陀羅』河竹登志夫著 興福寺貫首・多川俊映
【書評倶楽部】芝居の匂いがわき立つ…『かぶき曼陀羅』河竹登志夫著 興福寺貫首・多川俊映
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 著者は、河竹黙阿弥のひ孫で、演劇学・歌舞伎研究の大家。本書は、雑誌「演劇界」に6年にわたって連載した71編の「かぶき曼陀羅」に、日本経済新聞に寄稿した「私の履歴書」を加えて編んだ著者最後のエッセー集だ。

 歌舞伎など舞台芸術についての豊富な知識の下、洒脱(しゃだつ)な筆で仕上げた一編一編は、文字通り、珠玉という他ない。添えられたイラストは趣味のスケッチだというが、これまた心憎い。どのページからも、芝居の匂いがわき立っている。

 私は高校生の時分、父に連れられてよく京都南座の歌舞伎をみた。どんな出し物だったか、ほとんど思い出せないが、松本幸四郎や尾上松緑、中村歌右衛門、尾上梅幸に中村勘三郎などの役者の姿と声音(こわね)は、なぜかよく覚えていて、いまでも歌舞伎といえば、そうした人たちのイメージがよみがえってくる。昭和38年前後、まだ日本が穏やかだった頃の話だ。