■耐震補強に多額費用…存続断念 「古い教室で展示してこそ価値」
23区内に現存する最古の木造校舎とされる葛飾区教育資料館(同区水元)が、3月末で閉館する。耐震補強に多額の費用がかかるためで、展示資料は「郷土と天文の博物館」(同区白鳥)に移し平成28年度中の公開を目指す。区は資料館を当面保存するが、元教員や地元住民は、歴史を刻んだ教室で展示してこそ平和学習に役立つ、と閉館を惜しんでいる。
教育資料館は、明治に創立した南葛飾郡水元村立水元尋常小学校の校舎として大正14年に建てられ、東京都水元国民学校を経て区立水元小の校舎となった。2つの教室と廊下からなる約150平方メートルの木造平屋。昭和57年まで使われ、学校の南側に曳家した後、58年に葛飾区教育資料館として開館した。
館内には、昭和17年4月18日、水元国民学校高等科1年の石出巳之助(いしで・みのすけ)さんが犠牲になった米軍爆撃機による本土初空襲の様子を記録した書物と校舎に残された弾痕を展示。そのほか、明治時代から昭和にかけ当時の小学校が使われた教科書やノート、めんこやコマなど約1400点の資料を公開している。
来館者の案内や掃除などの管理を委託されている元区職員の片山栄次さんは「関西と関東で水道の蛇口の取っ手の仕様が違っていたころの取っ手が並ぶ手洗い場がある」と、建物自体にも高い価値があると強調する。
区によると、資料館は区内外から小中学生が見学に訪れるため、耐震補強が急務だった。しかし、平成24~26年度に耐震強度を調べたところ、補強や老朽化防止対策に約8700万円かかることが判明。入場料が無料で維持費がかさむことから存続を断念した。
展示資料は同館を管理する「郷土と天文の博物館」にコーナーを作り移動する。区教委は「資料館の建物は当面は保存に努める」としている。
閉館は決まったが、資料館としての存続を区に求めていた「教育資料館を生かす会」の会員は「長い年月を経た教室で展示するからこそ、子供たちが戦争体験を理解しやすく平和学習に役立ち価値がある」と惜しんでいる。