国歌斉唱は「大学の自治」を侵害するのか 国立大卒業式、実施は少数派 税金投入も大臣要請を〝無視〟

 卒業式での国歌斉唱をめぐり、国立大の対応が割れている。国は各大学に適切に行うよう要請しているが、実施する大学は少数派にとどまる。要請に対しても「大学の自治を脅かしかねない」と批判の声が上がる。国民に広く定着する国歌の斉唱を求めることは「大学の自治」を侵害するものなのか。

文科相批判「恥ずかしい」 大学側は混乱懸念か

 「私が学長なら、国旗掲揚、国歌斉唱は厳粛のうちに行う」。馳浩文部科学相は2月下旬、岐阜大学長が卒業式などで国歌斉唱を行わない方針を示したことに対し「国立大学として恥ずかしい」と述べた。

 文科省によると、昨年の卒業式で国歌斉唱を実施した国立大は86校中、わずか14校だった。

 学習指導要領で国歌斉唱が規定されている小中学校とは異なり、大学には明文化されたルールはない。「大学の自治」や「学問の自由」が尊重されており、実施に反対する教員らの存在に加え、大学側が混乱を恐れて実施に踏み切れないとの見方もある。

 昨年4月、安倍晋三首相は参院予算委員会で「正しく実施されるべきでは」と答弁。さらに6月、当時の下村博文文科相が国立大学長会議で適切に国歌斉唱を行うよう要請した。

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