裕福であっても耐えなければいけないことは、もちろんある。例えば、会社では上司の理不尽とも思える指示、家庭では妻の小言…。家計のために、サラリーマンが買いたいものをぐっとこらえることだって、辛抱だろう。満員電車に耐えることは、東京で会社や役所務めをしていれば、どうしようもないことだ。とても一面ではとらえられない。
ただ、改めてそんな素朴な疑問を投げかけられると、日本人の美質といってもいい「辛抱強い」ことが、「何だかおかしなこと」にも思えてくるから不思議だ。
「(日本人は)自分が他人に比べて、『特別我慢しているわけじゃない』ってどこかで思っている。だから、友人に聞いても『これぐらいは、我慢のうちに入らない』って言われる。ぼくは満員電車に毎日乗るなんて耐えられないけど、日本人はよく『これは仕方ない』って言う。どうかなと思うんだよね」
本書をひもとくと、この辛抱強い日本人への考察が、自身が見聞きした具体例を挙げてつづられている。