浪速風

ゴールは金メダルの笑顔だった

2004年のアテネ五輪の女子マラソンは過酷だった。競技名の由来となったマラトンから、第1回近代オリンピックが開かれたアテネのパナシナイコ競技場へ。約210メートルの高低差に加えて、猛暑を避けて午後6時のスタートだったにもかかわらず、気温は35度に達した。

▶世界最強と言われたポーラ・ラドクリフ選手(英国)でさえ途中棄権したサバイバルレースで、唯一人、異次元のランナーがいた。野口みずきさんである。誰もが早すぎると思った25キロすぎにスパートすると、影も踏ませぬ独走でゴールに飛び込んだ。感謝するように脱いだシューズにキスをした。

▶12年ぶりに目指したリオ五輪出場はかなわなかった。名古屋ウィメンズマラソンで序盤に先頭集団から脱落した。金メダリストにして、いまだに破られぬ日本記録保持者は歯がゆかったに違いない。が、一瞬の輝きにしても、頂点に立ったのは幸せではないか。ゴールの笑顔はアテネと変わらなかった。