科学・震災5年

専門家から南海トラフの地震想定は「無責任に水増し」との声も

M9の痕跡なし

 大震災後、国は地震学者らでつくる検討会を設置し、南海トラフで起きる地震の見直しに着手。駿河湾から日向灘までの広大な範囲で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界面が滑るM9・1の巨大地震を新たに想定した。

 だが松浦氏は「スロースリップ(地震が起きないゆっくり滑り)などのデータを見ても、従来想定の方が物理学的に妥当だ」と批判する。

 新想定は科学的に起こり得る最大級の地震を示し、防災に役立てるのが狙いだが、異論も少なくない。研究者からは「あり得ない」「これでは研究者失格だ」などの厳しい声も。ある地震学者は「また想定外と批判されないように、無責任に水増しした」と憤る。

 では南海トラフの巨大地震は本当に存在するのか。それを確かめる研究も始まった。産業技術総合研究所の宍倉正展グループ長は、南海トラフ沿いで津波堆積物を採取し、過去の地震を調べてきた。宍倉氏は「6千~7千年前の地層にさかのぼってみても、はっきりM9の痕跡といえるものはまだない」と話す。

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