科学・震災5年

専門家から南海トラフの地震想定は「無責任に水増し」との声も

 従来の予測の論拠となったのは固着域のデータだった。大震災前の地殻変動の観測では、宮城県沖や福島県沖に、それぞれ個別の繰り返し地震を起こす固着が見られた。

 明治時代以降の近代観測で東北沖はM7程度の地震を繰り返すことが知られており、経験とデータがよく一致していた。このため、M9の巨大地震は想定されなかった。

 予測を超えた巨大地震は物理法則の敗北だったのか。松浦充宏東大名誉教授(固体地球物理学)は「法則から見て特異なものではなかった」と反論する。

 松浦氏は2009年の論文で、固着域は宮城県沖と福島県沖だけではなく、両地域を含む南北方向の広大な範囲でプレート境界の滑り遅れが生じていることを指摘していた。「M9を起こすひずみとは当時、解釈できなかったが、いま考えてみれば十分理解可能だ」と話す。

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