サイバー攻撃の脅威(下)

中小企業「踏み台」は大企業も想定外 露呈する人材不足…「まずは意識改革から」

サイバー攻撃に関する相談受理件数の推移(警察庁調べ)
サイバー攻撃に関する相談受理件数の推移(警察庁調べ)

 めまぐるしく巧妙化し、増え続けるサイバー攻撃。セキュリティー対策を進める大企業にとっても、取引先の中小企業や子会社を踏み台にされる事態は「想定外」だった。

 「以前よりもサイバー攻撃の脅威は現実味を帯びてきた」。自動車大手「ダイハツ工業」(大阪府池田市)情報セキュリティー推進チームの福田かおり主任(47)の実感だ。

 生産や販売に影響すれば膨大な損害が出るだけでなく、社会的信用も一気に失われる。サイバー攻撃の被害を未然に防ごうと、同社はグループ企業約30社の担当者を集め、定期的に機密管理連絡会を開催。取引先の情報セキュリティー人材の育成や管理態勢の強化を図っている。

 福田主任は「場合によっては取引停止の事態も想定される。取引先にはウイルス対策などできることを着実にしてもらいたい」と語る。

 昨夏、京都府与謝野町の加悦工場で検査用パソコン(PC)がウイルスに感染した電子機器製造会社「日本電気化学」は今春にも、情報セキュリティーに関する社内規定を見直し、情報管理を厳格化する。ただ、中小企業だけに、対策にかけられる人材などの資源は限られているという。

 セキュリティー対策を担う即戦力は国内企業にそろっているわけではない。独立行政法人情報処理推進機構の推計によると、日本ではサイバー攻撃に対応できる技術者が官民合わせて約8万人不足している。中小企業の「人材不足」はなおさらだろう。

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