熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断

増える暴力団からの離脱者

 ■着実な就労支援を

 全国的な暴力団排除の機運が高まる中、シノギ(資金源の獲得活動)も厳しくなるうえ、工藤会(北九州市)への集中取り締まり、山口組の分裂などで、過去にないほど暴力団から離脱する者が増えている。

 特徴的なのは、服役中の離脱ではなく、社会で活動している組員の離脱が増えたことだ。離脱の理由は、「家族に迷惑をかけたくない」、「生活苦」、「組織への不満」など。一人一人が暴力団から着実に離脱することは、暴力団を人的に切り崩し、弱体化への足がかりとなる。

 しかし、問題は、離脱した元組員の社会復帰の受け皿なのだが、現実は厳しい。

 警察庁によると、平成26年までの10年間の離脱者約6100人のうち、就労できた元組員は152人で、就労率は2・5%に過ぎない。福岡県でも、昨年の離脱者は過去最多の127人であったが、就労できたのは10人にとどまっている。致し方ないことではあるが、企業は元組員を雇うことには消極的である。

 そこで、警察庁は昨年、「全国社会復帰対策連絡会議」を設置し、元組員の就労支援の後押しを始めた。福岡県警でも、全国初となる「社会復帰対策係」を発足させた。警察官や「社会復帰アドバイザー」らが、離脱しそうな組員を把握して離脱を促したり、事業者と連携して就労先を確保したりするのである。

 さらに、福岡県では来年度から、元組員を雇用した企業に一人あたり約70万円を給付する制度を開始する。組との関係を断ち切るために遠方での就労を希望する者もいるため、福岡県内のみならず、全国の企業を対象としている。元組員が業務上の損害を与えた場合には、雇用主に最高200万円の見舞金を支給する。

 これらの関連予算として約1600万円を盛り込んでおり、自治体が独自に公費で暴力団離脱者の就労支援をするのは全国初である。

 しかしながら、元組員の就労支援に公費を使うことには批判もある。「暴力団に入ったのは自業自得」「なぜ、税金でそこまでしてあげなくてはならないのか?」といった批判だ。

 ただ、他方で、真剣に更生してまっとうな人生を歩みたいと願う元組員がいることも事実である。そのような元組員のために、現場では警察、社会復帰アドバイザー、弁護士、理解のある企業経営者らが親身になって相談に乗り、奔走している。その後押しと就労支援の理解を広げていくためには、積極的な公的関与・支援を行っていくことが必要不可欠なのである。

 また、元組員を再び非合法な仕事に就かせないためにも、国や県が支援制度を充実させることは、国民、県民の安全・安心に役立つ。元組員の就労支援は、社会全体の問題として捉えざるを得ないのである。

 ただ、いくら公的支援を充実させても、暴力団員も「人」である以上、心が動かない限り真の更生はない。暴力団員の離脱は組の解散、逮捕、服役、結婚、子供の成長などが契機となることが多い。現場では、そのような契機を捉えてきめ細かな指導、助言を行うなど、地道な活動が続けられている。

 公的支援と現場における地道な人的支援がかみ合って、一人でも多くの元組員が更生の道を歩むことが求められている。