伝える ある震災遺族の5年(4)

津波訴訟を起こした遺族らが集まった 「企業の結果責任を追及する。遺族の輪を広げたい」

 「これが家族に対する銀行からの説明だ。かけがえのない命を奪われ、悲しむ家族への配慮の欠片もなかった」と弘美さんは悔しさをにじませる。説明会翌日の23年9月26日、健太さんは支店から約3キロ離れた海上で見つかった。

 これに対し、日和幼稚園から送迎バスに乗り犠牲となった佐藤愛梨ちゃん=当時(6)=の母、美香さん(41)も「娘に心からの謝罪をしてほしかった」と声を絞った。

 「助けたかったが助けることができなかったと、心から謝罪してくれたならば私は裁判という方法はとらなかった」。弘美さんの思いは、他の津波訴訟の原告遺族らと同じだった。

 フォーラムに際し、こんなコメントが寄せられた。田村さん夫妻と親交のある8・12連絡会(日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故被害者家族の会)の美谷島邦子事務局長のものだ。

 《被害者・遺族は、個人の罪を問いたいのではないのです。ましてや、補償等が目的ではありません。(中略)事故の教訓を生かしてほしい。何を最優先しなければならないかを企業は心に刻んでほしい。(中略)そして、企業防災の向上について発信し、語り継いでいくことが、地域の人々の信頼を得ることにつながると思います》

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