震災5年 3・11

8万392枚の写真と向き合い…「思い出」の修復が終了 東京

 ■災害時にはニーズ これからも拡大を

 東日本大震災の津波で汚損された写真の修復作業を手がけてきた、工学院大(新宿区)と神戸学院大(神戸市)の被災者支援プロジェクト「あなたの思い出まもり隊」が2月、全作業を終了した。開始直後から最後までを見届けた工学院大職員の平本達也さん(27)らが、被災地に寄り添った5年間の活動を振り返った。(重松明子)

                   ◇

 両大学は震災以前から東北福祉大(仙台市)と社会福祉分野で連携。その縁からプロジェクトが立ち上がり、学生と一般ボランティアを合わせて計約700人が参加して、被災者から託された8万392枚の写真と向き合った。

 震災の年の7月。がれきの中から発見された最初のアルバムが工学院大に届けられた。「泥水にぬれたまま、なんともいえないにおいがした。ページをめくると子供の成長記録や白黒の婚礼写真。亡くなった方の姿もあるだろう。なんとしてもきれいにして返したいと思った」と、平本さんは大学院生だった当時の心境を語る。手紙には「家も思い出も身内も友人も波の中です」と、悲嘆にくれる心情がつづられていた。

 学内の一室を借りて作業を開始。写真を洗浄後、スキャンしてデータ化、画像処理ソフトを駆使して傷を埋める…。1枚の写真に10時間費やすこともあった。「試行錯誤の連続でしたが、社会人の在宅ボランティアの方々の技術と協賛企業の援助で作業手順を確立できた。それからはペースも上がっていった」

 被災者と顔を合わすことのない活動だが、住所確認の電話をかけると涙声で喜んでくれたり、「一生の宝物」といった礼状の言葉が励みになった。宮城県内の仮設住宅に直接写真を返しに行く機会もあった。「ありがとう。懐かしい」。よみがえった写真を大切に握りしめ、喪失感から立ち直る家族を前に、すべての苦労が報われた。

 平本さんが「写真修復マニュアル作成の功労者」という、同大卒業生で建築会社勤務の柴間大輔さん(26)が参加者の思いを代弁する。「今後も災害発生時には、写真修復のニーズは出てくるはず。今回、いかに写真という『物』が大切であるのかと気付かされました。ぼくらのマニュアルを活用してもらい、遠くからでもできるボランティアとして広がってくれると、うれしい」

会員限定記事会員サービス詳細