阪神大震災で被災、倒産の靴メーカー、タイに本格輸出スタート…ネット販売で再起果たす 東日本の被災企業に「必ず道は見つかる」

自社製品を手にインタビューに応じる株式会社ベルの高山雅晴CEO=神戸市長田区(岡本義彦撮影)
自社製品を手にインタビューに応じる株式会社ベルの高山雅晴CEO=神戸市長田区(岡本義彦撮影)

 阪神大震災で一度は倒産した神戸の靴メーカー「ベル」が、タイの大手財閥と総販売代理店契約を結び、同国に本格輸出を始めた。中小規模の靴メーカーが海外でこうした契約を結ぶのは珍しい。インターネット販売などを積極的に活用し、ブランドの評価を高めた成果だ。ベルの高山雅晴社長(46)は東日本大震災の被災地で復興を模索する企業に「道は見つかる」とエールを送る。(牛島要平)

■画期的な契約

 タイ・バンコクの百貨店「バンコク伊勢丹」。昨年9月下旬、ベルの商品が並んだ。専用売り場が設けられ、集まった買い物客からは「軽くてやわらかいし、色もいい」と評判は上々だったという。

 価格は日本の1・5倍程度となるが、ベルの高山社長は「日本で独自のいいものをつくれば、東南アジアでも評価してもらえる」と語る。

 ベルの本拠地は、ゴムやナイロンを主な材料とするケミカルシューズの関連産業が集積する神戸市長田区。タイでの販売は、大手財閥の一つ「サハ・グループ」が独占的に請け負っている。昨年5月に5年間の契約を結んだ。

 仲介した神戸シューズ地域振興(神戸市東灘区)の担当者は「サハは欧米の有名ブランドを扱い、日本の大手商社などとも取引があるが、長田の靴メーカーとの契約は画期的」と話す。

■ブランドを守る

 ベルの従業員は約80人で、カジュアルシューズを中心に1日約300足を生産。タイでも好評で、サハとの契約前から年約3千足を輸出していた。

 タイで高い評価を得る基礎になったのが、日本国内で培ったブランド力だ。平成18年ごろから卸売業者を介さないネット販売を始め、20年ごろからは百貨店の催事にも出品するようになった。

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