正論

原発事故の福島、ふるさとを守る「風評」との闘いが続いている 日本思想史研究者・先崎彰容

先崎彰容氏
先崎彰容氏

 福島県いわき市で働いています、と言う。すると「東京から新幹線でどれくらいかかりますか」と聞かれる。新幹線など通っていない。品川駅発の常磐線特急スーパーひたちは、水戸や日立を縫いながら海岸線を北上し、終点いわき駅へと到着する-。

 フクシマの人間にとって当たり前の言葉、「浜通り」はまだまだ全国区ではないようだ。新幹線は郡山駅と福島駅を貫いて仙台へと進んで行く。ここは「中通り」。野口英世が生まれたのは「会津」だ。フクシマと人は言うけれど、気候も風土もまったく違う。

ささやかなシンポジウム

 まもなくあの瞬間から5年がやってくる。東日本大震災と福島第1原発事故について語るには、実は、このくらい初歩的な地形の説明から始めねばならない。批判しているのではないのだ。人間は、自分の生活にとって切実な利害に関わらない限り、関心などそう容易に保つことができない。

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